メンタルヘルス対策のポイント


「未病」 この分かりづらい状態を理解する

「こころの病」について考えてみましょう人は、いきなり病になるわけではありません。人の「こころの状態」は3ステップあります。何も問題ないのであれば「こころが健康」な状態です。明らかに強い自覚症状があったり、医師による診断で病名がつくような段階は「心の病」です。実は、この中間があるのです。それは「こころの不調」といい「未病」とも呼ばれます。つまり「こころが健康」→「こころの不調(未病)」→「心の病」という段階を踏むのですが、問題は、この「未病」です。病院で検査を受けても「病気」と診断するに足るだけの異常や医学的知見が確認できないために、「病気」とは診断されないのですが、かといって、健康とはいえない心身の状態が「未病」です。

「未病」に対する適切な対策を取らず、放置したままにしておくと、いずれ病気になる可能性があると予測されます。本人自身がなかなか自覚できない。まして他人は理解しづらい。なんとなくだるい。熱もないし体で痛いところもない。でも気力がわかない。「病気じゃないよな。会社を休むほどじゃない」「これくらいで休んでは、上司に叱られる」。人は、未病の時に、ついこう考えてしまいがちです。未病という言葉は中国の古典医学書「黄帝内経」にみられます。この医学書は中国の戦国時代から秦・漢時代にかけて集大成されたものです。生理・病理・診断法・治療法などについての基礎的理論が述べられています。このような大昔から、人は「未病」に悩まされてきたのです。

こうした「こころの問題」は、熱が39度もあるとか、心臓の手術をしたとか、病気で視力を失ったというような、だれでもわかるものではないので、なかなか他人には理解されにくいものです。理解してもらえない。心の病の当事者は、だからこそ苦しいのです。本人はまったく問題ないと思っているのに、配偶者や上司など身近な人に指摘されることもあります。本人に不調の自覚がないのに、周囲からみると、なんだかおかしい、明らかに何かあると感じるような場合もあるのです。このように、心の病は数値で割り出せるものではない一方で、本人は自覚が無いけれど何らかのサインが出ていて、敏感な他人であれば気づくケースもあるのです。