コラムこころの点描


「依存」について

子どもの頃に、「ごはんを残してはいけません。お百姓さんが一生懸命作ってくれたものですよ。」と言われた。母は、感謝して食べなさいと言いたかったでしょう。

私は、まず「繋がり」ととらえたのでした。それまでお百姓さんのことなどは考えたこともありませんでした。

私の読む本、字を書く鉛筆、机と椅子、テレビ、住んでいる家、履いている靴、自分の生活で自分自身で作ったものは一つもなく、すべて親が買ったものでした。

「自分は与えられている。」この感覚はまさに事実でした。

「私たちは与えられている。」

小説「蜘蛛の糸」(芥川龍之介)は勧善懲悪としてではなく、相互依存として読めるのです。


2020.7.27掲載 / 連載